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PROJECT

​脳波の建築

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BRAIN

WAVE

建物のデザインモチーフとして、施主である劉淑芬と建築家である 前田紀貞の「脳波」データが使用されました。脳波から導かれた前衛的で特徴的な凹凸のあるフォルムは、 他に類をみない、唯一無二の建築空間です。

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PENGHU

CONCRETE

都会から借りてきた「よそ行きのコンクリート」でなく、澎湖島の幸せな日常から肩肘張ることなく導かれた「普段着のコンクリート」とは?

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PENGHU

TEAM

澎湖島を心から愛する者たちが台湾、日本、米国と世界中から集められ、計画から設計・施工に到るまでに7年間という長い歳月が費やされました。

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GALLERY

​建築写真家による至高の脳波空間「ENISHI」の写真の数々をご紹介します。

Enishi Resort Villa
Enishi Resort Villa

​脳波の空間

「ENISHI RESORT VILLA」プロジェクトは、澎湖県湖西鄉のこの土地をおおよそ300年前から所有していた劉一族が2012年に民宿を建設すべく立ち上げたプロジェクトである。この使命の為に、澎湖島を心から愛する者たちが台湾、日本、米国と世界中から集められ、計画から設計・施工に到るまでに6年間という長い歳月が費やされた。当プロジェクトでの特筆すべき点は、それが通常の「ビジネス」といったレベルを遙かに超えて、人と人とが心の底から信じ合う「縁」(ENISHI)によって一貫して支えられ続けてきた、という事実である。このことはまごうことなく、(台湾と日本と米国の)「家族たち」によって産み出された「想い」に由来するものである。そんな温かい想いが建築に込められる為、その空間の決定には、施主である劉淑芬と建築家である前田紀貞の「脳波」データがデザインモチーフとして使用されることとなる。あなたがたがこの建築で遭遇する床や天井の凸凹の形態は 正に、この敷地が未だ草だらけの空き地であった地に於いて、300年来の家族の歴史(過去)が積み重なった現われとしての劉淑芬の脳波(の凸凹)に由来している。同じく、空を見上げた時 上空から光を取り入れるトップライトの凸凹形状は、劉淑芬の歴史に新たに光(未来)を吹き込もうとする建築家の脳波から引用されている。こうしたふたつの脳波の互の【共振】は、父親と母親、台湾と日本との【共振】でもあるのだ。そんななかでこの澎湖の地での新たな世界が生起させられてゆく、それが「ENISHI RESORT VILLA」なのだ。台湾と日本の未来永劫の幸福のために。

BRAIN  WAVE

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最初に1枚の「バスケットボール」の写真を見せておき、その後、高速度で入れ替わる1000枚のスライド写真を見せる。

スライド写真は過度に高速な為、視神経からの刺激が脳の判断に至るまでの時間を許してはくれない。しかしながら、「認識」はしていなくとも、連続スライドの中に「バスケットボール」が出現した瞬間、脳波は跳ね上がり「反応」していることがわかる。この「バスケットボール」を、例えば「ミサイル基地」にしてみる軍事的試みがある。最初に「ミサイル基地」の写真を見せ、次に衛生が撮影した動画を見せる。すると、本人には「ミサイル基地」であるとの認識にまでは至らなくとも、脳波の反応した場所の付近に「ミサイル基地」があることが推測される。

 

また、今回使用した脳波測定機器であるニューロスカイでは集中度と瞑想度が計れる。バスケット競技で集中してシュートした時の“脳の感じ”を覚えておき、その同じ状態に至るよう自分をコントロールしつつシュートすると、次の回にはうまくシュートが決まる。この「集中度」を覚えさせることがアスリートの教育でも使われている。

集中する風景、安静な風景を思い浮かべるだけでも、脳はそういう状態へ持っていかれる、ということなのだ。

 

これらは、「脳をハードウエアとして使うこと」と言ってもよい。言い換えれば、脳波の ローウエイブ(生の脳波)とは「世界の状態が録画されたものである」という仮説が成り立つ。

 

このプロジェクトは、施主と建築家の建築地で採取した脳波を使用することを試みる。ローウエイブとは、世界(敷地、時間、プロジェクトへの想い)等の雑多な情報をデータ化したものであるが、それをフーリエ変換によってα波+β波+θ波+δ波に分割し、その形状(世界の情報)を平面と断面にそのまま移し替える。

 

施主(断面)と建築家(平面)の間の互の【引き込み】。人間の脳は、常に環境から与えられた偶然性のカオスによって、ニューロンの固有周期を無限に動的に変化させるが、それ故に記憶や想起などといった機械では到達できない状態を結果する。これを、津田 一郎氏は「カオス的脳観」の共振現象と呼ぶ。完全にふたつのものが重なることなく、互の引き込みが起こるという状態だ。これが脳で発生している学習であり記憶である。

 

このプロジェクトでは、施主の記憶や想い(他律)と建築家の創造性(自律)が、互に補完し合いながら共振する、その状態が建築化されることが試みられる。

 

 

以上の扱いには、近代建築までの「言語化・論理化できる建築」の論理から「言語化・論理化できない建築」への移行という大きな建築への目論見が横たわっている。近代建築の射程では、我々の昼間の論理的判断である「意識」のみが扱われてきたが、実は私たちの脳内の「無意識」には「意識」の何千倍の容量が与えられている。これこそが、「言語化・論理化できない建築」、という眼差しからの建築の創造の道だといえる。

PENGHU  CONCRETE

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硬質なイメージを持つコンクリート。それは、ドロドロの液体としてミキサー車から降ろされ、その後 徐々に固まってゆく粘土の様な素材です。粘土に「縄」が押しつけられるとその表面に「縄模様」が浮き出てくるように、コンクリートが固まる際にも、その周辺にある「敷地環境」が “押しつけられる“ことでコンクリートの表情は様々に変えられてゆきます。それは、直接 品質に影響を及ぼす水分量/気温/湿度は勿論のこと、太陽や海風、壮大な自然やその恵みとしての食、おおらかな職人たちの汗や油にまみれた労働、そんなものたちすべてが入り混じって「澎湖島コンクリート」の表情を刻印してゆくのです。

 

初めて澎湖の地に降り立ったとき 私は、直感的にこの建築物の素材は「澎湖島固有」のものであるべきと確信しました。都会で流行 門切り型の「打ち放しコンクリート」をコピペするのでない、「澎湖のコンクリート」を現わし出すことが要でした。都会から借りてきた「よそ行きのコンクリート」でなく、澎湖島の幸せな日常から肩肘張ることなく導かれた「普段着のコンクリート」です。 綺麗に作る必要はありません、敢えて汚くする必要もありません。昨日までと同じように、何も足さず何も引かず、ただあるがままにやること、それだけです。ただひとつだけ昨日と違うことがあるとすればそれは、昨日まではこのコンクリートを隠すようにしてその上に施されていた「仕上」(タイル/塗装)が不要だということ。

 

そんなことを模索しているうち、驚くことに…… 結果的にENISHI RESORT VILLAのコンクリートの表情は、大菓葉柱狀玄武岩で目にする様な荒々しい「自然」、そしてそれ故のとてつもなく美しい秩序を感じさせるものとして打ち上がってきたのです…… 長き時間を経てきたこの楽園で、毎日 素直に笑ったり泣いたりしてきた ありのままの人なつっこく皺深いテクスチャーが、コンクリート表面に刻印されています。 ENISHI RESORT VILLAは、「都会のコンクリートの作法・流行」に従う必要などありません。それどころかこの島を訪れる人たちは、この澎湖島にこそ台灣のなかでも最良の空間とゆっくり流れる時間の豊かさを発見するのです。

 

欧米主導の文明時代が散々飽食を尽くした末に、もう間もなく到達するであろう「精神の時代」、それは実は既にずっと古(いにしえ)からここ澎湖にはあったのです。

TEAM ENISHI

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■施主:劉淑芬


■台日コーディネーター:劉美芬
 

■設計
=日本
 ・前田紀貞アトリエ一級建築士事務所
 ・辻真悟:CHIASMA FACTORY
 

=台湾
 ・謝宗哲:享工房 / Atelier SHARE / アトリエ・シェア
 ・翁廷楷:翁廷楷建築師事務所 / KAI Architects
 ・陳冠帆:原型結構工程顧問有限公司 / A.S studio
 

=米国
 ・Toru Hasegawa & Mark Collins:コロンビア大学・Proxy Design Studio
 

■設計管理
 ・陳重甫:原型結構工程顧問有限公司 / A.S studio

 

■施工
 ・蔡其昌:偕展營造有限公司

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